00057 和泉式部

巻一・春上

【歌】

春は唯我が宿にのみ梅さかば枯れにし人も見にときなまし

はるはただわがやどにのみうめさかばかれにしひともみにときなまし

 

【通釈】

春に我が家にだけ梅が咲くとしたら離れて訪れ無くなった人も梅を見ようときっと訪ねてくれただろうに

 

 

【作者】

和泉式部

中古三十六歌仙の一人

後拾遺和歌集には多数の歌が収録されている

 

 

【感想・その他】

「枯れにし」「離れにし」と掛詞。梅の縁語でもある。

ここでは離れてしまった人ということ。

「来なまし」カ行変格活用「来」の連用形+強意の助動詞「ぬ」の未然形+反実仮想の助動詞「まし」「なまし」で事実に反する想像「きっと~しただろう」と言う意味を表す。

「我が宿にみに梅さかば」と言うあり得ない仮想を受けての言葉。

なおこの歌は「和泉式部家集」第四番に所収されている。

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