【歌】
心あらむ人にみせばや津の国の難波わたりの春の景色を
こころあらむひとにみせばやつのくにのなにはわたりのはるのけしきを
【通釈】
風流が分かる人に見せてあげたいものだなぁ
津の国の難波付近の春の景色を
【作者】
能因法師
中古三十六歌仙の一人。
後拾遺和歌集には31首入集。
百人一首六十九番歌の作者。
【感想・その他】
「心あらむ」は「心あり」ラ変動詞の未然形+推量の助動詞「む」の連体形で情趣・風流を解するの意味。詞書に「いひつかはしける」とある様にこの歌を送った相手が「心あらむ人」なのだろう。
「見せばや」ばやは未然形に接続する願望意思を表す終助詞で見せてあげたいという意味。
「津の国の難波」「津の国」は摂津国(現在の大阪から兵庫一部をあわせた辺り)で「難波」にかかる枕詞。「難波」は古代には宮も作られ港も作られて海外との窓口でもあった。古今集六十四番西行の「津の国の難波の春は夢なれや葦の枯葉に風渡るなり」の歌に詠まれた様に芦が一面に生えて春は大変美しい景観の地だったようだ。